報告2 特別企画「九州・沖縄からの発信」2020年8月23日

報告第2弾 2020子どもの日本語教育研究会
  特別企画「九州・沖縄からの発信」

第1弾は、実行委員長からの報告と当日のディスカッションの内容です。
なお、報告 特別企画「九州・沖縄からの発信」(全体)はPDFでもご覧いただけます。

Ⅱ 質問項目への各報告者からの回答

①実践者・支援者の事例報告
a.熊本県
「熊本県でNPOが進めてきた学校への日本語指導員派遣10年間の取り組み
~現状と課題~」
       岩谷美代子(NPO法人外国から来たこども支援ネットくまもと 副代表)

質問:どのようなプログラムで指導をされていますか?
回答:①初期指導の場合は、サバイバル日本語(約1ヶ月)→日本語基礎(約1年)→日本語+教科内容(約1年)の順番で行います。
②ダブルリミテッド状態の子どもの場合、レベルチェック結果により、個別にプログラムを考えます。漢字力、読解力、時には算数、英語などに重点が置かれる場合もあります。

質問:特別の教育課程にはとりくんでいないのですか。
回答:特別の教育課程の考え方や実施方法を参考にしてはいますが、そのまま取り入れてはいません。当NPOでは、独自のカリキュラム、スケジュールに基づいて指導を行っています。熊本県は散在地域のためか、学校単位で独自に特別の教育課程に取り組んでいるところは極めて少ないと思います。

質問:新卒の日本語教員が子供への指導を仕事とするのはやはり現実的ではないのでしょうか。
回答:日本語指導は「取り出し」で「1対1」で行うので、外から見えなくなり指導の善し悪しが分かりません。ですから始めから責任を持ってきちんと指導できる方にお願いしたいと思っています。新卒の方の場合、他の日本語教育機関(日本語学校など)で1年以上経験を積んでいただいたあと、応募していただいています。

質問:空白地域は、今も日本語指導を行っていないということですか?
回答:はい、学校によっては空き時間に先生が交代で日本語を教えているところもありますが、日本語教師による指導、あるいは特別な教育課程による指導は行われていないと思います。

質問:ダブルリミテッドの事例が増えているとのことでしたが、判断はどのようにされていますか?
回答:当NPOで作成した日本語レベルチェックテスト結果と生育歴(数次の出入国歴があるかなど)言語環境(家族の使用言語)などで判断しています。
質問:ご発表をありがとうございました。強い意志と弛みない努力の結果、17の地域まで活動を広げられたことに感銘を受けました。質問は、支援員はどのように募集していらっしゃいますか。
回答:NPOのHPに募集記事を載せています。履歴書→面接→模擬授業+筆記試験→研修などを経て登録指導員となります。経験のある方にこちらから声をかけることもあります。

質問:NPO法人の財源はどこから出ていますか?
回答:事業①日本語指導に関しては、委託市町村より日本語指導の謝金をいただいていますが、教育委員会とのやりとり、会計事務、指導員派遣のコーディネートなどはすべて理事がボランティアで行っています。事業②進路ガイダンス、事業③生徒交流会、事業④日本語支援教室については、寄付金や助成金で賄っています。

質問:JSLカリキュラムで指導されていますか。
回答:ほとんどが1対1の指導なので、JSLカリキュラムの教科支援の考え方は教科指導の時には参考にさせて頂くこともありますが、初期指導に取り入れることはあまりありません。

質問:発表ありがとうございました。日本語指導員の有資格者の資格とはどんなものですか。
回答:①日本語教師の資格を持っている人(教育機関での420時間の日本語教師養成講座修了・日本語教育能力検定試験合格・大学での日本語教育主(副)専攻修了)+日本語教育機関での教育経験1年以上②日本語指導センター校での指導経験者(教員免許有)のいずれかです。

質問:指導員の方は教員免許をお持ちでしょうか。
回答:基本的に日本語教師の資格があることが条件です。(当NPOでは約半数の指導員が教員免許を持っています)

質問:発表ありがとうございました。ノウハウとして持っていらっしゃる指導法は、どこかに発表されていませんか。
回答:NPO内部で毎月指導方法について研修会を開いていますが、残念ながら外部には発表していません。

質問:日本語指導は「取り出し」ですか?その場合、その時間、教科授業が受けられない問題はどうカバーされていますでしょうか?
回答:①初期指導(全く日本語ができない状態)の場合、ほぼ1年間は「取り出し」でもあまり問題ありませんが、なるべく国語、社会、道徳など、聞いてもわからない授業、あるいは抜けても比較的支障のない授業の時に日本語指導を入れるように時間割を工夫してもらっています。②ダブルリミテッド状態の子どもの場合、「取り出し」するかどうかは、教科の授業を抜けるリスク、日本語指導を受けないリスクのどちらが大きいかで判断します。授業の補習は、たまに教科の先生がしてくれる場合もありますが、確実に実施するのは難しいです。市町村によっては、放課後指導を行う場合もあります。

質問:市町村が指導している地区とnpoが指導している地区と情報共有はされてますか
回答:市町村が指導しているのは、熊本市、八代市のみです。進路ガイダンスなどでは協力関係にありますが、日本語指導関係については十分な情報共有はありません。

質問:ダブルリミテッド子どもは、勉強についていけない状況に慣れていると言われましたが、どのようにその子どもたちの教育のお手伝いをされているのでしょうか。少し具体的に教えていただきたいです。
回答:どこで躓いているのかを注意深く観察し、漢字力、読解力、時には算数、英語などに重点をおく場合もあります。指導は長期に亘るので、日本語指導の予算が途中で切れてしまうことがあります。そのような子どもは、地域日本語教室や学校の支援教室などで指導を継続する場合もあります。

質問:県教育委員会の支援の体制としては、どれくらいの事をされているのか。お話しできる範囲でお願いします。
回答:2015年より「日本語教育支援連絡協議会」を開催(隔年)、2016年には「日本語指導を必要とする児童生徒のための受け入れ手引き」を発行されています。日本語指導の体制づくりについては、これからです。

質問:非漢字圏の子どもへの予算と時間が足りないということでしたが 、どんな教材で学習しておられるのですか。
回答:漢字教材についてお答えします。非漢字圏の子どもには「絵でわかるかんたんかんじ」(小1~3年・各1冊)を、根気強く学習できる子には「かんじだいすき」(小1~6年・各1冊)を使います。子どもによっては市販の漢字ドリル、自作漢字カードなどのほうが取り組みやすい場合もあります。基本的に子どもに合わせて教材を選びます。

b.宮崎県:
「宮崎における日本語学習支援のあり方にかんする一考察-学校教育支援モデルの試案-」
       原田真理(宮崎国際教育サービス株式会社・事業推進部 主任)

質問:日本語指導担当教員は取り出し以外にどの様な指導をしていますか?
回答:支援員の方のお話によると、一斉授業に入り対象児童の横について指導されているとのことでした。

質問:日本語教育コーディネーターは県が設置しているのですか?
回答:「地域日本語教育コーディネーター」は県からの派遣です。現在4名任命を受けていますが、うち3名が日本語教師(有資格者)です。ただし、学校に出向くことはまだしておりません。地域日本語教室の担当までです。

質問:急に外国人が増えた要因は何だと思いますか?
回答:人材不足が叫ばれているため、企業に雇用された方が多いからだと思います。特にベトナムからの技能実習生が、H29で1327人だったのが、R1年で800人増え、2133人になっています。今後宮崎も島根県出雲市の様に、突然企業が大量雇用を行うということも、可能性としては十分あると思います。

質問:大学生日本語ボランティアは、どの様な業務をするのですか?
回答:山形大学や静岡大学の様なボランティア団体までには至っていないので現状をお伝えすることは難しいですが、①取り出し授業の際TAとして支援する。②700時間の非常勤講師だけでは対応できない部分をボランティアで補う。ことになると思います。

質問:留学生は日本語を指導できるのですか?
回答:宮崎大学にいた日本語支援の修士課程の留学生の中には日本語を教えていた人がいましたが、今後弊社で取り組もうとしているプロジェクトは、N1レベルの留学生が、学校文書を母語で翻訳したり、就学ガイダンスに同行してもらい通訳してもらうイメージです。

質問:会社としての資金源はどこですか。また、売り上げも必要なんですか?
回答:取引先は、大学、行政、企業、国際交流協会です。利益追求で動ける業務内容ではないのですが、社会貢献もしつつ、社員の生活資金も確保しなければならないので、人件費、税金のことを考えて動かなければいけないのが悩みの種です。

質問:日本語指導担当教員は、どのくらいいるのですか?
回答:現段階で指導担当教員がどのくらいいるかは把握できていません。申し訳ございません。県教育委員会の方も当日参加されていたので、その方に伺えればいいなと考えています。

c.沖縄県
「沖縄県の子どもの日本語教育にかかわる実践事例報告」
                    平良ゆかり(沖縄県読谷村立渡慶次小学校 教頭)
       天願千里佳(沖縄県北谷町立浜川小学校 日本語教室担当)
                    髙橋美奈子(琉球大学教育学部 准教授) 
                    渡真利聖子(琉球大学グローバル教育支援機構  講師)

質問:日本語担当が臨時任用というのは、日本語指導をする期間だけ任用されて、終了すると終了という意味ですか。
回答:違います。臨時任用教員とは、小・中・高校において、当該教員免許状を取得していることを条件に期間を限定して雇用される教員のことです。沖縄県の学校現場では、教員採用試験に合格している本務教員のほかに、採用試験に合格していない臨時任用教員がかなりの割合で常勤として勤務しており、任用期間は1年ですが、定年時まで更新されることが少なくありません(常勤職なので、本務教員と同一賃金、同一責任であるため、担任や公務分掌等の職責も本務教員と同等です)。臨時任用教員の中でも、県から日本語指導の加配が認められた学校には(今年度の県内の小中学校では16校)、校長先生の裁量で任命された臨時任用教員が日本語教室の担当教員になります。臨時任用教員の場合は、同一校に勤務可能な期間は3年間なので、1~3年で他校へ異動となります。

質問:DLA講座の講師はどこに依頼されたのですか?また受講対象者は誰でしょうか?
回答:2018年11月に沖縄県内で開催したDLA講座の教師研修会についてご説明しますと、本研究会のメンバーである平良が東京外国語大学のDLA研修を受講したことから、その事後発表も兼ねて実施にいたりました。その際、DLAの開発メンバーのお一人である伊東祐郎先生が研修会の講師を引き受けてくださいました。それ以前にも、2017年には、本研究会のメンバーである髙橋が大学の地域連携事業の予算を獲得し、DLAの開発メンバーのお一人である菅長理恵先生を講師として招聘し、2日間のDLAの使い方講座を開催しました。いずれの対象者も、教員に限定せず、沖縄県内で子どもの日本語支援に関わっている方・関心がある方を幅広く対象にし、各回50名前後の参加者がありました。

質問:児童生徒が日本語指導が必要だと判断する基準、視点をどのような形で保護者に示されていますか。また、教員研修は県全体ということでしたが、どのような内容をされていますか。
回答:日本語指導が必要だと判断する基準について、沖縄県で定まったものがありませんが、本発表者の一人の勤務校での事例を紹介します。天願が所属している市町村にも明確な判断基準というものはなく、基本的に担任と日本語教室担当(天願)が相談して、日本語指導が必要かどうかを決めています。気になる児童に本当に日本語指導が必要なのかということに関しては、しっかりと判断できているとは言い難いというのが現状ですが、何度かその児童と話をしたり、学習の様子を見たりして決めています。保護者へは、担任の先生から通常学級で授業を受けている時の児童の様子を伝えてもらい、日本語教室に通級することで児童の困り感を少し解消できるのではないかと説明しています。私が直接保護者と話をする場合は、家での様子や生育歴を簡単に聞き、子どもの言語と発達段階の話をしながら、「日本語教室でこの子のペースで学習を進めることによって、困り感が少しでも解消できれば・・・」と前向きな姿勢で臨んでいます。
また、県全体を対象とした教員研修についてですが、私たちの「沖縄県子ども日本語教育研究会」の勉強会として企画・実施し、関係者への周知は、県・市町村教育委員会にも協力を仰いでおります。研修内容の詳細は、「沖縄県子ども日本語教育研究会」サイトの「勉強会」の項目をご覧ください(https://jslonet.jimdofree.com/)。

質問:ありがとうございました。少し話が違うのですが、平和教育に取り組む際に他県と比べて何か特別に配慮されていることがあれば、教えていただけると幸いです。昨年まで3年間沖縄の公立小学校に通っていたアメリカからの兄妹(両親は大学関係)の、日本語継続学習を海外で担当しています。自身は広島の小中学校で長らく日本語講師をし、国に関係なく平和教育を行っていたので、3年間沖縄の学校に通って「平和や沖縄について学習をしたことがない」という発言に疑問を感じました。そういうことがあるのでしょうか
回答:その兄妹の学年や事情がわからないのですが、沖縄の小学校であれば毎年6月23日の慰霊の日の前後に特設授業というような形で、沖縄戦に関する学習を全校/学年で行うことが一般的なので、公立小学校にいたのに沖縄戦や平和教育を受けたことがないというのは考えにくいです。何らかの事情があったのかもしれません。
なお、沖縄においては上記の平和学習(沖縄戦学習)の際に、米兵が「敵」として突然出てくるようなビデオを配慮なく見せてしまうことで、クラスの中にいるアメリカルーツの子どもたちに対するいじめが起こってしまったりするというようなことも度々起こっていることがわかっています。それもあるので、そうした子たちを対象とした平和教育のあり方がどうあるべきか?ということについては、沖縄県内でももっと考えていくべき課題なのですが、そうした認識が十分に広まっているわけではありません。

質問:臨時講師で日本語担当、というのは日本語担当をご本人が希望されたのですか。
回答:上記で回答済みです。
質問:加配教員は日本語指導経験がある方が配置されているのでしょうか。そうでないとすれば、どのような指導をされているのでしょうか。教えていただければ幸いです。
回答:上記で回答したように、県で雇用される加配教員は、教員免許状の取得のみが条件なので、日本語教室がある学校の加配教員にどの方が配置されるかは校長先生の裁量になります。沖縄県の場合、日本語教室通級児童生徒は、英語母語話者の児童生徒が多いので、英語能力が高い方が配置されることが多く、英語教授法などを取り入れて指導されています。日本語指導経験がない方であっても、教員免許状取得者ですので、学級で使われている副教材や文科省から出されている「外国人児童生徒の受入れの手引き」などを参考にしながら指導されているようです。
しかし、近年は、県内でも英語母語ではない日本語指導が必要な児童生徒の存在も認知され始めたことから、英語能力の有無よりも、法務省告示の日本語教員資格(主専攻・副専攻など)取得者を積極的に任命するケースもあります。

質問:それぞれの立場からの御報告をいただき、大変興味深く拝聴いたしました。3名の日本語指導の方は、複数校をご担当されているのでしょうか。
回答:発表者の天願がいる市町村は、小学校4校、中学校2校を3名(県からの日本語指導加配教員2名、町からの日本語支援員1名)体制で支援しています。3名とも籍をおいている小学校とは別にもう1校担当しています。誰がどこに行くかは、年度始めに町内の日本語教室担当と教育委員会で話し合い決定しています。

質問:貴重なお話、大変ありがとうございました。日本語指導を担当されているのは学校の教員ということですが、別途日本語教師等の資格をお持ちなのでしょうか?
回答:上記でも回答しましたが、県から日本語指導ということで加配されている教員は、日本語教師の資格を持っていないものが多いですが、近年は、日本語教育の理解が広がり、日本語教師資格を取得している教員を積極的に配置する傾向も見られます。また、市町村で雇用している日本語支援員(非常勤講師等)については、教員免許状取得者に限らず、市町村によっては、英語が話せる方や日本語教師有資格者を雇用条件にしているところもあります。

質問:移動が多いため、児童に対する長期的な教育プランを立てることが困難とおっしゃっていたんですが、他の県でもそのように児童に対する長期的な日本語教育プランを立てて指導をされている現状はあまり見ておりません。他県では、それぞれの児童に対して長期的な教育プランを立てているのでしょうか。
回答:私たちも模索なので、ぜひ他県の情報があれば教えていただきたいです。

質問:保護者から断られることとオーバーステェの関係は?
回答:これまで指導に当たった児童で、オーバーステイの児童はいませんでした。在籍している児童等については、教育委員会等から事前に知らせがあるからだと思われます。しかし、新入生の場合は、就学前情報がないため、学校と教育委員会との情報連携の改善が必要だと考えております。

②受入れ・指導体制の事例報告
d.福岡市
「福岡市の日本語指導体制」
       池田尚登(福岡市日本語サポートセンター・コーディネーター)

質問:ステップアップテストとは具体的にはどのようなテストでしょうか。
回答:「ステップアップテスト」は、日本語基礎プログラムにおける評価ツールとして作成しました。福岡市では、日本語基礎の共通テキストとして、小学生は「ひろこさんのたのしいにほんご」中学生は「みんなの日本語」を使用するようにしています。それぞれ10課ごとに、4技能(話す・聞く・読む・書く)別に評価できるように作成しました。テストの問題に、「ひろこさんのたのしいにほんご」や「みんなの日本語」の文例やイラスト等を使用するため、凡人社と協議し、公開を前提としない限定的な範囲での使用を許可していただいています。

質問:日本語指導教諭は、学年業務や学級担任など、通常の学校教員としての枠割を同等に担当するのか。
回答:通常の学校教員とは役割は同じではありません。拠点校を担当する日本語指導教諭は、学年業務や校務分掌等からは外れ、日本語指導の業務を優先して行うようになっています。配置校担当の日本語指導教諭は、日本語指導の業務が最優先ですが、学校事情等により、学年に所属したり校務分掌の仕事を担当する場合もあります。

質問:同じ県の中でも市によって児童へのサポート体制にばらつきがあるように感じますが、この原因は一体どのようなことでしょうか。
回答:推測ですが、同じ県内にあっても市町村のそれぞれの教育委員会の考え方の違いにより、対応の違いがあるのではないでしょうか。福岡市は政令指定都市で、福岡市独自の教育施策が進めやすい環境にあります。

質問:貴重なお話、ありがとうございました。ボランティアの日本語指導員の方は有償でしょうか。どのような資格をお持ちの方でしょうか。(教員免許の有無)またその方々は教育委員会に所属し、様々な学校に行かれているのか、学校付けで決まった学校に行かれているのかどちらでしょうか。
回答:日本語指導員は福岡市教育委員会の教育支援課が随時募集しており有償のボランティアです。必要な資格は(1)大学で日本語教育を主専攻または副専攻して修了した方(2)民間団体等が主催する日本語教師養成講座を修了した方(3)日本語教育能力検定試験に合格した方となっています。教員免許は必要ありません。日本語指導員を必要とする学校から委員会に申請があり、委員会が派遣する仕組みになっています。

質問:ボランティア日本語指導員の指導力に不足を感じる点があれば、どんな事でしょうか?JSL指導は出来ているのでしょうか?
回答:指導力不足を感じることはありませんが、大人に対する指導と子どもに対する指導の違いに最初はとまどわれる場合もあるようです。子どもに対する日本語指導について学べる仕組みがあるとよいなと思います。福岡市では、教科に関する指導は日本語指導教諭が行うこととなっており、日本語指導員には日本語指導教諭と連携しながら「サバイバルプログラム」「日本語基礎プログラム」「技能別日本語プログラム」を担当してもらいます。

質問:平成26年度からの日本語指導体制の改革はすばらしいです。関わる人材が増えるにつれ、日本語指導員への研修など他おう
回答:質問の後半が不明ですが、日本語指導員への研修体制へのご質問と理解し、お答えします。日本語指導員への研修は、年1回教育支援課主催で行います。主に子どもに対する日本語指導について研修をします。またJSL日本語指導教育研究会が主催している月1回の研修会にも希望があれば参加していただきます。

質問:同じ県内でも市によって支援にばらつきが出る理由は、どのようなことでしょうか。
回答:上記回答済みです

質問:研修、体制等充実していて勉強になります。コロナ休校中は、オンラインによる支援などは行われていましたか?
回答:このコロナの状況下、日本語指導も対応を苦慮しています。休校中は日本語指導のプリント配付等の対応はしましたが、オンラインでの支援はできませんでした。学校再開後、コロナで通級を見合わせている児童生徒に対し、オンラインで指導したケースはあります。

質問:日本語指導員への研修など大変だと思います。どのように研修を進めていますか
回答:上記回答済みです。

質問:教職員研修の内容とどのような資料を活用されているか知りたいです。
回答:担任や教科担当を対象とした教職員研修は、学校指導課主催で年1回行います。「外国人児童生徒等が在籍する学級担任の役割や指導法」について、外部講師(東京学芸大学等)をお招きして講義していただきます。また、拠点校担当の日本語指導教諭が講師を担当し、演習をおこなったりもします。講座の内容や資料は、「外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム」の報告書や指導事例集、ガイドブック等を参考にしています。

質問:多言語化の中、採用された日本語指導教諭はどのような言語で支援に当たっているのでしょうか。また、毎年の採用があるのでしょうか。
回答:日本語指導教諭は、基本は直接法(日本語で日本語を指導する)で指導を行っています。子どもの状況や指導内容によっては、英語や中国語などが堪能な日本語指導教諭がいますので、指導中にその言語を使用する場合もあります。
採用は現在は若干名行っているようです。本年度は1名の応募を行っています。

質問:日本語の指導が必要な児童生徒に対し、平等に指導ができるようにと考えられたシステム作りは貴重だと思います。指導の事例集を作られたのも、今後指導に関わる人にとって非常に助かると思います。他県にも公開して頂くことはできますでしょうか。
回答:指導事例集は、福岡市が採用しているテキストで使用している文例について全課作成しました。学習指導案と指導の実際という構成になっています。指導の実際では、児童生徒の学習中の写真や表現物等も掲載されており、公開する予定はありません。

質問:時々外国籍児童のいじめの問題を聞きますが、福岡では何かつかんでいらっしゃいますか。
回答:いじめや様々なトラブルについて、日本語指導担当教員や日本語指導員が指導中にキャッチすることがありました。その場合は、すぐに在籍校管理職や在歴学級担任に連絡をし、問題の解決に尽力してもらっています。

質問:H29の日本語指導員(20名?)の採用によって、どのような効果があったのかは、今の時点でおわかりでしょうか?
回答:日本語指導教諭の採用により、日本語指導を担当する教職員が固定されることとなりました。その結果、各学校で「今年は誰が日本語指導を担当するか」について校内で話し合う必要がなくなり、各学校での日本語指導体制が安定しました。その結果、専門性の高い日本語指導教諭に継続して指導を受けられるようになりました。中学校の日本語指導教諭が採用され、中学校に拠点校ができたのも大きな成果です。中学校は高校受験という大きな目標があります。中学校の日本語指導教諭は、高校受験を視野に戦略的に指導を進めていくことが可能となりました。また、報告でもお話ししたとおり、研修の積み重ねができるようになってきたということも成果の一つです。

質問:日本語サポートセンターの所属メンバーを教えていただけたらと思います。
回答:「日本語サポートセンター」というと大きな組織をイメージされるかもしれませんが、日本語サポートセンターに所属しているのはコーディネータの私一人です。

質問:日本語指導教諭は、福岡市で他の小中高等学校教員の採用と同様に、教員採用試験を通じて採用するものですか。
回答:そのとおりです。教員採用試験を通じて採用されます。

質問:「拠点校」のシステムを取られることで、「集住地域+散在地域」混在の課題は解決されたのでしょうか。
回答:散在地域と集住地域の格差は、以前に比べるとずいぶん改善されたのではないかと思います。散在地域でも、拠点校の日本語指導教諭+日本語指導員(96時間)の指導が受けられます。日本語指導教諭の指導はDLAにより在籍学級の授業に日本語で参加できるレベルになるまで続けられます。学校の支援以外に、福岡YWCA等の外部支援団体のサポートもあり、子どもの状況に応じて、子どもと外部支援団体をつなぐことも行っています。

質問:市レベルではなく県レベルではどのような支援体制があるのでしょうか。
回答:福岡県の指導体制についてはよく分かりません。福岡県教育委員会が主催して日本語指導担当教員の研修会は行われているようです。

質問:手引きやマニュアルを作成されたことなのですが、差し支えなければ、具体的にどのような事項が記載されているのか教えて頂けないでしょうか。岡山では、子どものバックグラウンド(母語や習得状況、家庭環境等)が様々で、学校によって人数もかなり違うため、各校で、子どもの様子を見て、その場その場でどのような指導を行うか判断され、対応するというのが現状のようでしたので、マニュアルがあるととても助かると感じました。
回答:「福岡市JSL日本語指導教育研究会」のホームページの「資料ダウンロード」のページで「帰国・外国人児童生徒等の受け入れマニュアル」のダウンロードができます。内容は以下のとおりです。

Ⅲ 参加者アンケートから

 当日参加者95名(内、実行委員関係者含む)へグループセッション終了後にウェブアンケートを実施した。アンケートはGoogle Formを活用し、URLを知る参加者であればだれでも入力できるものとし、調査期間はセッション終了後からの1週間の8月31日までとした。
回答は72件(75.8%)と高い回答率であった。回答からは、大学教員と小学校教員(各18.4%)をはじめ行政職員(11.8%)、高校教員(9.2%)、日本語支援員、地域の日本語ボランティア団体など、多くの所属先からの参加がみられ、関心の高さがうかがえるオンラインセミナーとなった。
オンラインセミナーの内容は多岐にわたるものであったが、約99%は参加した感想に対し、好意的に評価し、有益な情報が「あった」、「非常にあった」と約90%が回答した。自由記述コメントからは「さまざまな立場での外国につながりを持つ子供たちへの支援に関しての事例や実践、また問題点に対する解決法などをお聞きし、大変勉強にな」ったという知識・情報の共有ができたという声や、「九州内の各県の現状を知ることができ、よかった」、「他県の取り組みを知ることができ有意義な時間」で、「悩みも同じだと共有もでき」たと、九州・沖縄地域として地理的に身近な地域の取り組みを改めて知る機会となっただけでなく、「九州の他県の方とつながることができ、支援体制の構築に向けて一歩前進」することができた会となったようである。
また、セミナーの後に実施した茶話会は、回答者の役半数が参加し、「多くの励まし」を受け、「とても有意義な時間だった」、「茶話会で一緒になったメンバーとグループになり、連絡を取り合いたいと思っ」たなど、「今後もつながり、広がりのありそうな会」との期待を込めた意見が多く、散在する日本語教育の支援が必要な子どもたち同様に、散在する支援者の横・縦の連携を望む意見が散見された。
 一方、「それぞれのご報告をもう少し時間をかけて聞きたかった」「チャットへの回答をする時間」の確保など、参加者の知識吸収への熱量に対し、時間の制約等により応えることが難しかったことが明らかとなった。しかしながら、オンラインの良さとして、「家にいながら研修ができたし、発表もよく分かった」ことや、「ドラえもんの“どこでもドア”ではないですが、オンラインの画面の向こうの自分の日常とは少し違う世界にすぐに参加できるのは素晴らしいことだ」と、オンラインセミナー開催に対して好意的な意見も見受けられた。ややもすれば物理的に集まることに経済的・時間的に制約がかかる九州・沖縄地方における研究会の在り方に関して、一石を投じる実践となったと考えられる。
      

とめ:実行委員 岩﨑千恵(長崎短期大学)
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