子どもの日本語教育研究会 第10回大会報告

子どもの日本語教育研究会第10回大会は、2025年3月8日の1日目はオンライン、2日目の9日は昨年度に続き横浜国立大学にて行われました。年々、様々な立場の方が参加されるようになってきており、すそ野の広がりが感じられました。
ここでは、2日間のアンケートに寄せられた声をもとに、大会のご報告をいたします。
なお、各発表の内容は「第10回大会 実践・研究・パネル発表 要旨等資料 大会企画パネル・研修資料」をご覧ください。

【1日目】2025年3月8日(土)9:50~15:10(オンライン:Web会議システムZOOM)
1日目は、午前の部が実践・研究発表で、実践9件、研究6件のご発表がありました。オンラインでの実施ということもあり、全国から210名以上の参加がありました。今回は学校現場で日本語指導にかかわっている方のご参加が多く、その多くの方が今回が初めてとのことで、参加者のすそ野の広がりが感じられました。アンケートでも、現場の実践に活かせるヒントになったという声が多く、指導者が多くの悩みを抱えていることが垣間見られました。
午後の部は、公募パネルに応募いただいた1組のパネルディスカッションが行われ、オンラインという環境の中でもうまく聴衆を巻き込んだ進行で好評でした。宮崎、大分、沖縄3県の連携や、各県の支援体制についての具体例がよくわかり、参考になったという声が寄せられました。
(大会実行委員 當房詠子)

【2日目】2025年3月9日(日)13:00~17:10(対面:於・横浜国立大学 企画パネルのみハイブリッド)本研究会は、多様な言語的文化的背景をもつ子どもたちを対象とする日本語教育(ことばの教育)に関わる諸問題について、学校・地域の教育・支援現場の実践と研究の相互交流を図り、現場の成長と関連領域の研究の発展を促進することを目的に活動をスタートさせて10年の節目を迎えました。
そこで、今回の大会企画パネルでは、10年の本研究会のあゆみを、外国人児童生徒教育の施策、学校における組織的教育、地域社会で営まれる支援の広がりと質的変容に照らして、複層的多面的に捉えるとともに、今後について展望することを目的としました。
発題として、まず、コーディネータの齋藤ひろみ(本研究会事務局長)より、研究会の10年間の活動と大会等の発表内容の分析結果を報告しました。次に、教育施策について文部科学省総合教育政策局国際課課長の中野理美氏、浜田麻里(本研究会研究企画委員会プロジェクトBチーフ)、そして「外国につながる子どもが学ぶ学校現場の10年」と題して横浜市立南吉田小学校の金子正人校長より、「地域の子どもの日本語・学習支援活動の10年」と題してminamiこども支援教室の山崎一人氏により発題が行われました。その後、発題者からの問題提起を受け、次の3つの論点で質疑応答を行いました。
・この10年の教育施策、学校・地域の取り組みとその成果から何が示唆されるのか。
・実践・研究・政策の循環による課題解決に向け、実践研究をどう位置付け直し、実施していくのか。
・「子どもの日本語教育研究会」として、これから挑むべき課題は何か。
会場からは、学校・地域支援の状況について「直接担当していない現場の教育をどう巻き込むかが重要」「努力や工夫をする教員がいる一方で、その実践が積みあがっていない現状を何とか変える必要がある」等の意見やその方法についての質問が示されました。
登壇者からは、「関係者間の課題の共有が重要であり、そのためには子どもの姿が可視化される場を創ることが大事だ」「内側では楽しい活動から始めること、外部には積極的に情報提供して話題化し周囲の理解を力にすること」等が提案されました。そして、これらの問題と解決の糸口こそが、子どもの日本語教育研究会が今後の取り組むべき課題として、発題者・参加者間で共通に認識されました。
(コーディネータ・本研究会事務局長 齋藤ひろみ)

企画研修は対面で開催され、石田喜美氏(横浜国立大学)を講師にお迎えし、テーマ「ゲームを通じて子どもたちの言葉と語りを支援する〜教科・領域学習の入り口をデザインする教材研究・ワークショップ」のもとに約90名が同大学に集まりました。
研修目的は、教材としてのボードゲーム/カードゲームを活用し、多様な言語文化背景をもつ子どもたちが自身の経験を言葉にするための場を考えることでした。参加者は2種類のゲームのモデルプレイの見学、その中の1つのゲームを体験しました。体験後に「子どもたちが遊べるゲームの工夫」や「ゲームの場づくり」についてグループで話し合い、ゲームデザインのプロダクトを作成しました。それからプロダクトの発表・共有をしました。アンケートでは「日本語教材・指導の新たな視点を学べた」「授業で活用できそう」「言葉を使う環境づくりの大切さを再認識した」などのご意見が寄せられました。
(大会実行委員 研修担当 権野さち・谷啓子)

【子どもの日本語教育研究会 第10回大会実行委員】
実行委員長:河野俊之(横浜国立大学)
委員:草木美智子(法政大学)
権野さち(お茶の水女子大学大学院)
谷啓子(東京学芸大学)
當房詠子(梅光学院大学)

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