子どもの日本語教育研究大会 第11回大会報告

子どもの日本語教育研究会第11回大会は、2026228日(土)の1日目はオンライン、2日目の31日(日)は昨年度に続き、大会企画パネルをハイブリッドで、大会企画研修を横浜国立大学にて対面で行いました。

ここでは、2日間のアンケートに寄せられた声をもとに、大会のご報告をいたします。なお、各発表の内容は「実践・研究・パネル発表 要旨 大会企画パネル・研修資料」をご覧ください。

目次

【1日目】2026年2月28日(土)9:30~15:10(オンライン:Web会議システムZOOM)

1日目は、午前の部が実践・研究発表、午後の部が公募パネルに応募いただいた2組によるパネルディスカッションという内容で開催されました。
午前の発表は、実践18件、研究5件と、例年に比べ研究発表が少なく、実践発表が3倍以上という数でしたが、それだけ他の学会等に比べ、現場で日本語指導に関わる方からの関心度が高いということなのでしょう。
一般参加者も、300名という申込枠を早々に400名まで広げましたが、当日は370名(93%)の参加があり、その半数以上が学校現場で日本語指導に関わっている方々でした。オンラインでの実施ということもあり、全国各地からの参加はもちろん、海外からの参加もありました。
アンケートでも、発表内容、公募パネル共に満足度が高く、「質の高い内容に触れることができた」「もっと多くの発表が聞きたかった」という声が多くありました。
公募パネルは、プレスクールの取り組み、JSLカリキュラムが取り上げられていましたが、どちらも関心が高く、「両方聞きたかった」「時間が短かった」という声が届いており、今後扱ってほしいテーマとしても多く挙げられていました。
また、「オンラインのおかげで地方にいても聞くことができてよかった」という声がある一方で、「対面で発表を聞き、ディスカッションできた方がよい」といった声も同程度あり、実行委員としては悩ましいところです。
なお、今回は発表に応募いただいた数が予想を超えて多かったため、当初の予定より開始時刻を早めて実施しましたが、午前の時間内で収めるために1つの発表時間が短く設定されたため、「駆け足になってしまい、十分に伝えきれなかった」「聞く方の理解が進まず、消化不良だった」「興味深いテーマが多かったので、もっと時間をかけて聞きたかった」といった声をいただきました。次回より改善できればと思いますが、参加された皆さまの高い関心の表れであり、ありがたいことと思います。

(大会実行委員査読担当 當房詠子、谷啓子、石津みなと、志賀玲子)

【2日目】202631日(日)13001710(対面:於・横浜国立大学 企画パネルのみハイブリッド)

今年の大会企画パネルは,「日本語担当教員のライフストーリーから考える「子どもの日本語教育」の教員養成・研修」というタイトルで実施しました。「子どもの日本語教育」に関わる教員の養成・研修を充実させることは,日本語指導が必要な子どもを支援する学校や地域社会にとっても喫緊の課題ですが,一個人の力ですぐにどうにかできる問題ではありません。本企画では,「子どもの日本語教育」の教員養成・研修について,参加者一人ひとりが自分ごととして捉え,今後の養成・研修のあり方について共に考えていくために,日本語担当教員のライフストーリーという観点から取り組むことにしました。2時間のパネルの前半では,頼田敦子氏(横浜市教育委員会・横須賀市教育委員会),中村夏帆氏(愛知県岩倉市立南部中学校),高橋知也氏(横浜市立矢向小学校)の3人の現職日本語担当者をパネリストとしてお迎えし,各氏が大学卒業以降,現在に至るまでに経てきたライフストーリーを共有いただきました。その後,松本一子氏(元名古屋柳城女子大学)による総括を踏まえて,パネル後半の1時間は会場の参加者も交えてのグループディスカッションと全体ディスカッションを行いました。

3~4名のグループに分かれてのディスカッションに先立ち,会場参加者の一人ひとりが自分のライフストーリーを振り返る図を作成し,グループ内での自己紹介でライフストーリーを共有しました。続けて,自分たちが支援を行う上でぶつかった壁やその壁の乗り越え方をグループ内で共有し,「今さらに学びたいこと」を考えました。各自のライフストーリーを踏まえた「今さらに学びたいこと」は,今後,養成・研修に取り込んで欲しい内容だとも考えられます。全体ディスカッションでは,各グループからの「今さらに学びたいこと」が共有されましたが,「楽しい授業の行い方」という意見に対して,パネリストからは「日本語指導が必要な子ども」の視点からの「楽しい授業」とは何かというようなコメントもありました。「ことばの力のものさし」について,もっと多くの人に知ってもらいたいという意見もありました。

参加者がライフストーリーなどを記入した用紙は,パネル終了後に任意で提出をお願いしましたが,多くの方が会場に記入済用紙を残してくださいました。パネリストとして登壇した3名だけでなく,会場にいた一人ひとりが非常に多様な経歴を持っていることがわかり,子どもの日本語教育研究会の参加者の強みを再認識する機会ともなりました。多才・多彩な人材の集まりであることは,子どもの日本語教育全体の強みではないでしょうか。今回の大会企画パネルは,そのような人材を今後,さらに増やしていくために必要な教員養成・研修について考える良い機会となりました。

(大会実行委員 大会パネル担当 西川朋美・河野俊之・石津みなと)

企画研修ワークショップは「KOBANASHI:オチから始まる学びことばと文化と笑いをつなぐワークショップ」と題し、長年、小噺(Kobanashi)を日本語教育実践に取り入れてこられた畑佐一味氏(パデュー大学名誉教授)を講師に迎えて行いました。小噺とは、落語家が本編への導入部で場を温めるために話す短い笑い話のことです。セリフも基本的に決まっているため、初級レベルから挑戦できる言語、文化の学習活動でありながら、自分らしさを表現する創造的な活動でもあります。今回のワークショップでは、実際に小噺を演じる体験を踏まえ、この活動がもたらす学びの特性や効果、現場への取り入れ方について意見を交わすことを目的に企画しました。

ワークショップ冒頭には、中瀬洋子氏(神奈川県立座間総合高校)に落語の実践報告をお願いしました。中瀬氏は、座間総合高校の第二の文化祭と呼ばれる学校行事「国際フェスタ」で、日本語を第一言語としない生徒が落語の演目に挑戦する実践を行われています。落語を一人で演じるのではなく、複数で役を割り振って演じるスタイルを採ることでより多くの生徒たちに披露できる機会とする中瀬先生の工夫や、挑戦した子どもたちと周囲の変化のお話は、参加者にとても参考になったようです。また、当日は2022年の国際フェスタ「たいらばやし」に出演した卒業生お2人、崔晶珥さん(湘北短期大学総合ビジネス情報学科2年生)と丸岡ディアナ恵美さん(横浜市立大学国際教養学部国際教養学科2年生)も登壇、緋毛氈と座布団の上で「たいらばやし」の一部を演じて当時の経験を語ってくださいました。

その後はファシリテーター大舩による説明と畑佐先生から小噺のコツをレクチャー。事前に投稿された参加者の動画を見たり、参加者に登壇・実演していただいて畑佐先生にご指導を受けたりすることで、小道具の使い方、目線の動き等、どんどん小噺らしく演じられるようになっていきました。小グループでは学んだことを活かして小噺スクリプトを演じ合った後でディスカッションし、自分にとっての気づき、学び、成果、決意等をSlidoに書き込んで共有しました。Slidoからは体験を通して感じた小噺活動による学びの特性、取り入れることで生まれる関係性の変化の可能性、自分の現場でする場合のアイデア等、短時間でしたがそれぞれに得たものがあったことが見られました。お土産の多言語版の小噺集も参加者の現場でいかされることと思います。本企画はあくまで導入編として、今後もフォローアップセッションを企画していく予定です。

(大会実行委員 研修ワークショップ担当:大舩ちさと・河野俊之・権野禎・志賀玲子・谷啓子)

 

本大会も多くの方々のおかげで実り多いものになりました。「楽しかった」「学びが得られた」など個人的にもうれしい声をいただきました。 登壇者のみなさま、そして、参加者のみなさまに感謝申し上げます。また、縁の下の力持ちとして活躍してくださった大会実行委員ほか子どもの日本語教育研究会の委員に感謝しております。

(大会実行委員長 河野俊之)

 (大会企画パネルの様子)

(大会企画研修ワークショップの様子)

(大会企画研修ワークショップ「たいらばやし」実演のお二人)

【子どもの日本語教育研究会 第11回大会実行委員会・事務局】

大会実行委員会

大会実行委員長:河野俊之(横浜国立大学)

大会実行委員:
草木美智子(城西大学)
権野禎(お茶の水女子大学大学院生)
當房詠子(梅光学院大学)
谷啓子(東京学芸大学)
石津みなと(公益財団法人石川県国際交流協会)
大舩ちさと(早稲田大学)
志賀玲子(武蔵野大学)
西川朋美(お茶の水女子大学)

子どもの日本語教育研究会事務局
事務局長:齋藤ひろみ(東京学芸大学)
原瑞穂(東京学芸大学)
稲田直子(事務補佐担当)

 

 

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